6 そして。

全前脳胞症の子供の多くは、ほとんど生きて生まれてこず、特に重度の子は生まれても1年以内で亡くなる可能性が高いと聞いてます。 難病支援ネットワークに連絡してみても、「数が少ない」と言われました。
親の会もなくて、それなら自分で作ろうと思い始めたんです。病院の中ではお母さん同士のつながりもあるのですが、病院を出ると全部なくなってしまう。変わった病気の人は分かち合えないのかと思いました。
でも私たちの経験で、今、同じ病気の子供を持ったお母さんたちの悩みは「ワープ 」できるはずなんです。1人でいては情報は集まらない。私は大地の口唇口蓋裂が愛しいし、ふさぎたくないと思いました。でもこの病気の子供たちは表に出てこないし、昔からある病気なのに、情報が何もない。確かに生まれた後の生存率が低いから仕方ない面もあるのかもしれないけど。
大地は亡くなったんですが、亡くなって終わりにしたくないんです。その後をつないでいきたい。
私と同じような思いの家族がいればつなげていきたい。大地は天国でそういう糸を結ぶお仕事をしていると思います。だから私ももう大地はいないけど、大地と同じ病気を持つ子供たち、そのお母さんたちと接していきたい。

私は自分の思うように生きてきました。なのに、「普通」の子が産めなかった。頭を打ったんです。でもそのことで、人の痛みも分かるし、話も聞けるようになった。
そして一番は、感謝の気持ちが持てるようになったということです。 大地のおかげだと思っています。
 今はホームページを作りたいんです。全国の人と出会いたい。絶対に同じ病気の仲間を捜しているお母さんがいると思うんです。ページの名前は「天使のつばさ」。
翼君の名前と天使になった大地のことを込めた名前です。自分の子供は皆、天使。
子供って、偉いお医者さんが書いた文献を簡単に覆すようなすごいことをしでかすんですよ。大地も翼君もそうです。

お母さんたちは毎日毎日すごく厚くて高い壁と戦っていると思います。私たちもそうだった。恥ずかしいとか、どうやって育てるんやとか、世間に顔向けできないとか。
今じゃあ「一体、どんな世間やねん!!」って笑えますけど。でも初めから受け入れられる人はいないと思うんです。でも私たちと出会えることで、私たちの経験をお話しできることで、その壁を壊す「コツン」の一つになるかもしれない。辛い期間を少しでも縮めたい。今、しんどい人へ近道を作りたいんです。大地はそんなことを考えているお母さんを見守らなきゃと思っているんじゃないでしょうか。